「どどど、どうしよう!?💦」
まさか国立公園みたいな観光地で熊に遭遇するなんて……予想外の出来事に私はパニックになって泣き出しそうになったけど、パパはこんな時にも冷静だった。
「大丈夫。こういう時はとにかく落ち着いて、静かにゆっくり離れ……ん?」

熊の正体
「……あれは着ぐるみだな」
その瞬間、体からどっと力が抜けた。
「なぁ~んだ〜!!」
パパの言うとおり、よく見たらすぐ横で平気で釣りをしてる人もいるし、本物にしては動きがコミカルだし、話し声も聞こえてくる。どうやらあの熊はこの国立公園のマスコットらしい。
近くで見てみると、着ぐるみとはいえかなりリアルな作りだった。
「何もこんな本物に寄せなくても良いだろう……紛らわしい」パパは小声でそう呟きながら、顔をしかめる。私も、マスコットならもっと可愛くても良いと思うんだけどな……
「……でもせっかくだから一緒に写真撮ってもらおうか」
パパはデジカメを取り出し、熊さんとのツーショット写真を撮ってくれた。
「はいチーズ!」
「ありがとうごいざいました!」
「いえいえ」
「おっと、そろそろサンマイシューノに戻らないと、約束の時間に遅れるぞ」
「熊さん、さよなら!」
「また遊びに来てね~」
熊さんにお礼を言って、私たちは帰路についた。
パパとのお別れ
私とパパはまたサンマイシューノに戻ってきた。途中にあったスイーツショップで、お土産を2つ買った。ひとつはママの分、もうひとつはパパの仕事仲間の人たちにあげる分だ。
ママとの待ち合わせの公園に近付くにつれ、私とパパの会話は少なくなっていった。
公園に入るとすぐ
「陽菜〜!」
私を呼ぶ声がして、遠くの方からママが走ってくるのが見えた。
「あっ、ママ!」
「おかえり!」
ママの顔を見て、嬉しさと同時に胸が締め付けられるような気がした。いよいよパパとお別れの時が来たんだって、実感したから。
「……優菜、久しぶりだな」
「……お久しぶりです、陽介さん」
パパとママも離婚後、11年ぶりの再会のはずなのに、ふたりとも笑顔はなく、最低限の会話しか交わさなかった。パパとママの溝は私が思うよりずっと深いみたい。
「陽菜、帰りましょ」
「うん……」
気まずい空気が流れる中、私はパパに別れを告げた。
「パパ、またね」
「陽菜……この3日間いっしょにいられて本当に楽しかった。ありがとう」
「私も楽しかったよ、パパ。大好き」
「パパも陽菜が大好きだ。離れていてもずっと君を思ってる」
パパの言葉に私の心はジーンと熱くなった。私とパパは最後にぎゅっとハグをした。
「……また何かあったらこちらから連絡しますので」
「あぁ、これからも陽菜のこと頼んだぞ」
「ママ、これパパと私からのお土産だよ!」
「わあ……ありがとう。帰って一緒に食べようね」
歩きながらお土産を渡すと、ママに笑顔が戻ったので私はホッとした。
パパは、私とママが公園を出てタクシーに乗りこむまで見送ってくれていた。
(パパ、ありがとう。また絶対会いに来るよ)……私は何度もパパを振り返りながら、心の中で呟いた。
秘密は心の中に
「……『こうして、私の小学校最後の夏休みは、一生忘れられない思い出になった。』」
「……よし!書けた!」
「陽菜、入るわよ」
「あ、ちょっと待って! 日記はここに隠して……」
「なぁに、ママ?」
「パパと会ってみて、どうだった?」
「パパはね、優しくて、物知りで頼りになって、ちょっとドジなとこもあって、面白い人だったよ。最初はぎこちなかったけど、一緒に花火したり、屋台にご飯食べに行ったり、キャンプにも行ったんだ」
「えっ、あの人がそんなことを……?
でも、そっか……楽しかったなら良かったわね」
パパとの思い出を話す私を見つめるママの顔はとても優しかった。
でもパパの仕事のことだけは何となく話さない方が良い気がしたので、黙っておくことにした。
(おわり)
おまけ
「差し入れ?貴様が我々に?こんな可愛いドーナツを?!」
「いや……これは娘がお前たちに、お土産をあげたいと言うから、それで……💧」
「嬢ちゃんが選んだのか。じゃあ遠慮なく貰っとこ」
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました✨️予定通り、夏が終わるまでに完結出来て良かった……
次回から大学プレイ日記を再開する予定です。



























