パパと私の夏休み「パパの秘密」

The Sims4
大学生活がまだ途中なんですけど、夏の間にどーしてもやっておきたかったことを、先に終わらせてしまおうと思います。今回の主人公は小森野陽菜(こもりのひな)という少女です。

私はベンチに腰掛け、深呼吸をした。
小学生最後の夏休み。都会の喧騒が少しだけ遠い、この公園で……私は今日、実の父親と11年ぶりの再会をする。

1歳の時に両親が離婚して以来、パパとは一度も顔を合わせていない。
おじいちゃんとおばあちゃんの話から、ずっと私の中のパパは「ママをいじめた悪い人」「私が生まれた時でさえ、家庭を顧みなかった赤の他人」というイメージだった。

でも最近になってママの口から、パパはずっと私の養育費を払っていることを聞かされた。
もちろん、ママは一生懸命働いて私を育ててくれているけれど、中学受験のための塾代、習い事のピアノと英会話のレッスン料、毎月のスマホ代、これから先必要になる進学や就職や結婚のための貯金……パパのお金に助けられてる部分は大きいと言っていた。法律で決まってる親の義務とはいえ、金額は相場をかなり上回っているらしい。
パパは経済的には、私をしっかり支えてくれていたのだ。

だから私は、どうしてもパパに会ってみたくなった。ママは渋々承諾して、パパに連絡をとってくれたけど……最後まで複雑な表情をしていた。

『パパのこと少しでも嫌だなって感じたら、すぐに電話してね。いつでも迎えに行くから』

モラハラでママを苦しめた人、でも親として責任は果たしている人……
本当のパパはどんな人なのか、私にどう接してくるのか、想像もつかない。

待ち合わせの時間が近付いてくる。
私は時計を見ながら、パパの到着を待っていた。

そのとき、遠くから車のエンジン音が聞こえてきて、公園の前で止まった。

車から降りてきたのは、知らない男の人だった。早足でこちらに向かってきて、私の前で立ち止まった。
それが私のパパ……『石橋陽介』だった。

「陽菜か? 随分大きくなったな……」

”エリートビジネスマン”
パパはママの言っていたイメージ通りの人だった。きちんとセットした髪に、高級ブランドの服と腕時計、ピカピカの革靴。でも、私をじっと見つめているその目は、どこか悲しそうにも見えた。

「はい。今日から3日間、お世話になります」

「……車に乗りなさい。パパの職場に案内する」

パパのそっけない態度に、いきなり心が折れそうになる。感動の再会のはずなのに、どうしてこんなにぎこちないの?
車でパパの職場へと向かう途中も、会話らしい会話はなく、たどり着いたのは立派なオフィスビルだった。

ちなみに何でパパがこんなにそっけないのかと言うと、めちゃくちゃ緊張してるからです。

パパとママは、同じ職場で出会って、結婚した。
入社したてのママが配属された部署の上司だったと聞いている。とても優秀なのに、どこか影があって、自分のことを多く語らない。ミステリアスな雰囲気を持つパパに、ママは惹かれていった。

結婚後、ママは妊娠を機に専業主婦になったけど、そのころから、パパのモラハラが酷くなっていった。エリートとしてバリバリ仕事をこなしていたパパは、家には滅多に帰ってこなくなった。
結局、私が生まれた後もパパの態度に改善は見られず、結婚からわずか2年後には、離婚……
社内結婚だったから、職場ではパパの悪い噂が広まった。結局パパもその会社に居辛くなったらしく、辞めていったそうだ。

そのあとのパパの足取りはよくわかっていない。
養育費はちゃんと振り込まれるし、電話は繋がるから、もうあの人がどこで何をしてようが、気にしないことにしたのよ……とママは言っていた。

でも、自宅ではなく職場に私を連れてくるなんて、少し違和感がある。

「せっかく来てくれたのに申し訳ないが、仕事が立て込んでるんだ」

パパの言葉に、私はがっかりした。11年ぶりの再会なのに、パパは私と過ごす時間を工面してくれなかった。やっぱり私のことなんてどうでも良いのかな。

さらに、職場に自室があるから今日はここに泊まりなさいというパパの言葉に、疑問が浮かんだ。普通の会社員が、職場に自室を持ってるなんて聞いたことがない。

複雑そうなセキュリティシステムを慣れた様子で解除し、エレベーターで最上階へと向かう。豪華なエントランスを抜けて、階段を下りた先に、再び厳重な扉が現れた。

その異様な雰囲気に私はゾッとした。

パパはこんなところで、いったい何の仕事をしているの……?

ドアを通り廊下に足を踏み入れると、そこはまるでSF映画に出てくるような、異様な空間だった。怪しい光を放つ謎の機械が、ゴウンゴウンと謎の音を立てて稼働している。

(絶対普通の会社じゃない!!💧)

連れてこられた部屋は、パイプ椅子や机が雑に置かれ、ソファや自動販売機、コーヒーマシンなどが置かれている……どうやら休憩室らしい。

「着替えてくるから、ここで待ってなさい」

そう言うと、パパは自販機で私にジュースを買って、部屋から出ていってしまった。

一人になった休憩室は、薄暗くて静まりかえっている。窓はなく、外の景色も分からない。こんなところに一人でいるのは、とても不安だ。もし、何かあったらどうしよう?

ジュースを飲んで待っていると、パパが戻って来た。その姿に、私は言葉を失った。

「え!?パパ、その格好はいったい……」

戻ってきたパパは、ものすごい肩パッドのついた謎のコスチュームに身を包んだ、まるで悪役のような姿だった。その瞬間私は、パパがママの言うようなエリートビジネスマンなんてものでは絶対ないと確信した。

「パパはね、ここで世界征服を企む秘密組織の幹部として働いてるんだ」

「ちょっと何言ってるか分からない」

こうして、パパと私の夏休みが始まった。

続く……
ということで今回は、幻氷の娘・陽菜の視点で「秘密組織の日常」をやっていきます。8月が終わるまでに完結出来れば良いなと思ってます。
タイトルとURLをコピーしました