パパの口から飛び出した「世界征服」という衝撃的な言葉が、私の心に嵐のように吹き荒れていた。
確かにパパの職場はどう見ても普通の会社じゃない。でも、そんなアニメの悪役みたいなことを本気で言ってる組織が実在するなんて……そして私のパパがそんなところで、幹部というそこそこの地位にいることが何よりショックだった。

パパの過去、そして今
「あの……ママから、パパは証券会社勤務って聞いてたんだけど……」
私は、恐る恐る聞いてみた。
「確かに、ママと結婚してた頃はそうだった」
そしてパパは私に、語った。子供の頃、組織に拾われて育てられたこと……アルバイトをしながら大学に通い、就職して一度は組織から身を引いたこと……素性を隠して、ママと結婚したこと……でもママと離婚して仕事を辞めた後、組織に戻ってきたことを……
「つまりここは、パパの職場でもあり実家でもあるんだ」
パパはこともなげにそう言った。
「さて、もう仕事に戻らねば……」
休憩室を出て、パパは私を自分の仕事部屋に案内した。
移動中、私は胸が苦しくなった。
パパは今まで、どんな悪事に手を染めてきたのかな……そうやって得た怪しいお金が、私の養育費になっていたなんて……
「……。」
「……言っておくが、パパは会社勤めの頃のノウハウを生かして組織の資金繰りに協力してるだけで、実際に悪事を働いてるのはぜ~んぶ、社長と他の幹部の連中だからな?」
私の不安を察したのか、パパは何やら必死に言い訳していたけど、どう考えても問題はそこじゃない。
パパの仕事部屋はまるで秘密基地のようだった。よく分からない機械や世界地図、そしてパソコンがずらりと並んでいる。
パパは真剣な表情でPCに向かい、私は渡されたタブレットでゲームを始めた。
パパの仕事仲間?
しばらくすると、忍者みたいな恰好をした、怪しすぎる男が部屋に入って来た。
「この間の潜入調査の報告書だ。確認しとけ」
そういって、忍者はパパのデスクにレポートを放り投げた。部屋にピリピリした緊張感が漂う。
忍者とパパは明らかに仲が悪いようだ。
忍者は隅っこでゲームをしていた私に気付くと、
「誰だ?」
と聞いた。パパは、
「娘だ」
と答えた。
「……。」
「……。」
ふたりは口をきくのが面倒なように、短い言葉しか交わさず、すぐに忍者は部屋を出ていってしまった。
\ じ~っ… /
(感じ悪っ……💧)
忍者が普通にウロウロしてるし、やっぱりここはまともな会社じゃないんだ……とっくに分かってたことなのに、改めて現実を見せつけられたようで、私は落ち込んだ。
「……あいつはパパと同じで、幹部の一人だ。危険だから近付くんじゃないぞ」
パパは私に注意した。言われなくてもあんな人に近付きたいとは思わない。
再び静寂に包まれた部屋で、タブレットのゲームに集中していると、
さっきの忍者が戻って来た。
「嬢ちゃん、花火とか好きか?」
そして持ってきた段ボール箱を、私の目の前にドンと置いた。私はびっくりして声も出なかった。
「タブレットばかりじゃ飽きるだろう……暗くなったらここの屋上でやると良い」
「貴様……いったい何の真似だ……?」
部屋に再び緊張が走る。私は慌てて忍者にお礼を言った。
「あ、ありがとうございます……花火、好きです」
すると彼は少し照れ臭そうに咳払いをして、パパに向かって
「おい。危ないから火をつけるのは、お前がやってやれ」
と言った。
「……あぁ。
陽菜、仕事がひと段落したら一緒にやろう」
「うん!」
パパがそう言ってくれたから、私の心は一気に軽くなった。もしかしてこの人、気を使ってくれたんだろうか……?
ワクワクしながら箱を覗いてみた。中に入っていたのはたくさんの手持ち花火、打ち上げ花火、回転花火……これだけあればちょっとした花火大会が開けそう!ひとつひとつ手にとって、パパとの楽しい時間を想像して、胸を躍らせていると
次は変な電波が出てそうなヘッドギアを付けた、科学者っぽい男が部屋に入って来た。
「例の新兵器の開発はどこまで進んだ?」
「あーそれが、開発中に予期せぬトラブルが発生してな……追加の資金援助を頼みたいんだが」
「何?すでに多額の資金を投入しているのに、また何も結果を出せなかったというのか」
パパと科学者は、何やら言い合いになっている。さっきの忍者といい、ここにはパパと仲の良い人はいないみたい。毎日こんなギスギスした環境で働いているパパが可哀そうで、私は胸が締め付けられる思いがした。
「これ以上、貴様の価値のない研究に出す金はない」
「な、何だとぉ~ゴホッゴホッ!!パワハラのストレスで呼吸が…」
でもパパの職場にいるクセの強すぎる人たちを見ていると、逆にパパはこの中ではすごくまともな方なのかもしれないと思えて、ちょっとホッした。
ちなみに社長はスラニでバカンス中、おねえも休暇貰って自宅に帰っています。人数が少ない時期だから、子ども連れてきてもまあ良いか……という判断。
































